シマノはダサいと言われた?|カンパとの対立と黒船の歴史

結論
- 今、シマノがダサいという強い風潮はありません。世界の約8割のシェアを持ち、プロのレースでも勝ち続ける業界の標準です。
- かつての「ダサい」は、工芸品のようなカンパニョーロに対し、機能を優先した工業製品のシマノが欧州市場に殴り込んだときの美意識の対立から生まれました。
- 誰もが使う正解ゆえの特別感のなさや、最先端感のあるスラムとの対比で、相対的に地味に見えることがある。どれも性能とは別の物差しの話です。
以前「ジャイアントはなぜダサいと言われたのか」という動画を出したところ、「次はシマノ編を待っています」というコメントをいただきました。そこでこの動画では、シマノがなぜダサいと言われたことがあるのかを、古い話も含めて軽く振り返っています。肩の力を抜いてご覧ください。
Q. 今、シマノはダサいと言われている?
A. 今はそういう強い風潮はありません。
- 世界の約8割のシェアを握り、プロのレースでも勝利を量産
- 完成車メーカーは、まずシマノを載せることを検討する
- ロードだけでなく、マウンテンバイクやグラベルでも圧倒的なシェア
- デュラエースやアルテグラなど、どのグレードを選んでも間違いないという評価が主流
勝ち続けている以上、悪口は言いにくいものです。「無難」という言葉は、裏を返せば信頼の証でもあります。
ただ、ネットの片隅には「黒一色でテカテカした4アームクランクが工業的で地味」という声や、「カンパニョーロのほうが伝統的で美しい」という好みもあります。1980年前後の**AX(エアロ志向のコンポ)**のように、形状を追求しすぎて失敗作扱いされた製品もありました。ただしそれはアジア製だからという偏見ではなく、純粋に製品の出来の話です。
Q. なぜ昔は「ダサい」と言われたの?
カンパニョーロとの美意識の対立
| カンパニョーロ | シマノ | |
|---|---|---|
| 出自 | イタリア | 日本 |
| 位置づけ | 工芸品 | 工業製品 |
| 強み | 美しい曲線、削り出し、贅沢な素材 | 変速性能、壊れにくさ、精密さ |
| 評価 | 眺めているだけで満足できる | 性能は高いがデザインは無骨 |
1980〜90年代、シマノはデュラエースで欧州のロードレース界を席巻していきました。そのとき、古くからの自転車ファンから「性能はいいが色気がない」「日本の家電製品を自転車にくっつけたようだ」という声が上がったのです。
これは、ジャイアントが台湾製と軽視された歴史と驚くほど似ています。性能で勝っても、美意識の面では受け入れられにくかったわけです。バブル期にBMWの3シリーズが「六本木のカローラ」と揶揄されたのと同じような構図です(私は3シリーズに乗っていましたが、凄まじく優秀な車でした)。
自転車界の「インテル」という格好悪さ
シマノはよく自転車界のインテルに例えられます。どのブランドの完成車を買っても、中身はシマノ。初心者向けのクロスバイクから数百万円の機材まで、クラリスからデュラエースまで、同じ会社の中で完結してしまいます。
自動車業界のトヨタのように、どこにでもあって安心だけれど、特別感は薄れる。自転車は移動手段であると同時に自己表現の道具でもあるので、全員が使う正解をあえて外したくなる人も出てきます。これがシマノの「ダサさ」の正体の一つだと思います。
ただし、近年の新型デュラエースやアルテグラは、質感の高い、非常に洗練されたデザインになってきています。
欧州に殴り込んだ黒船
シマノは1921年に堺で創業した、100年以上の歴史を持つ会社です。フリーホイールの製造から始まり、技術を積み重ねてきました。
- SIS(インデックス変速):それまで指の感覚で調整していた変速が、カチッと決まるように
- STIレバー:ブレーキレバーで変速もできる発明。ダウンチューブのレバーに手を伸ばす必要がなくなり、安全性まで変わった
カンパニョーロも数年遅れで同じ発想のレバーを出しました。技術で先手を取った意味は大きく、見た目で揶揄されながらも、欧州のチームも次第にシマノを使うようになっていきました。勝てばブランドは関係ない、結果がすべての世界だからです。
先ほどのAXも、空気抵抗を減らすという発想自体は間違っておらず、早すぎただけでした。数十年後には各社が本格的にエアロを追いかけています。
Q. スラムの登場で何が変わった?
アメリカのスラムは、マウンテンバイクで先に存在感を示し、ロードの上位グレードに参入したのは2000年代に入ってからです。
- フルワイヤレス電動変速やフロントシングルを次々と導入
- 最先端のテクノロジー感、モータースポーツ的な格好良さ
- 一方で、ワイヤレスは高額になりがちで、電池切れの心配もある
スラムの尖ったイメージに対し、シマノは石橋を叩いて渡る堅実さ。この対比で、若い世代の一部からシマノを「古い」と見る声も出てきました。新しいライバルが出ると、今まで正解だったものが急に地味に見える、相対的なダサさです。今はSNSでちょっとした派閥もありますが、好みで選べる時代になったのは良いことだと思います。
まとめ
- 今、シマノがダサいという強い風潮はない。世界シェア約8割の業界標準
- かつての「ダサい」は、工芸品のカンパニョーロと工業製品のシマノの美意識の対立から
- 誰もが使う自転車界のインテルゆえに、特別感が薄れる皮肉もある
- SIS・STIで欧州に殴り込んだ黒船の歴史は、自転車史のドラマ
- スラムの登場で相対的に地味に見えることも。どれも性能とは別の物差しの話
- ジャイアント編はジャイアントはなぜダサいと言われたのかへ
よくある質問
シマノのコンポはダサいのですか?
今はそういう強い風潮はありません。性能で結果を出し続けていて、完成車メーカーもまずシマノを検討するほどの業界標準です。ただ、黒一色の工業的なデザインを地味と感じる声や、カンパニョーロのほうが美しいという好みは一部にあります。
シマノとカンパニョーロの違いは何ですか?
カンパニョーロはイタリアの工芸品として愛されてきたブランドで、美しい曲線や削り出しの質感が特徴です。シマノは変速性能や壊れにくさ、精密さを追求した工業製品として磨かれてきました。美しさと機能、どちらを重視するかの違いです。
シマノのSTIレバーは何がすごかったのですか?
ブレーキレバーで変速もできるようにした発明です。それまではダウンチューブのレバーに手を伸ばして変速していたので、ハンドルから手を離さずに済むようになり、安全性まで変わりました。
動画で見る
この記事の元になった動画です。実際の動きは映像のほうがずっとわかりやすいので、ぜひあわせて見てください。