坂道を疲れずに登るコツ|ヒルクライム入門:サドル位置と3つのポイント

・ 三岡慶利

動画「🔰 [脱初心者] クライム入門、疲れずに登る、2000メートルも」のサムネイル

結論

  • 登りも平坦と同じく「踏まずに体重で走る」が基本。ただし坂では車体が傾き、サドルが実質10cm近く後ろに下がるので、体重がペダルに乗りにくくなります。
  • 登りの前にサドルを思い切り前に出し、登りの最中はサドルの先端に座る。これだけで誰でもすぐに楽になります。
  • 乗り方のコツは3つ。なるべくゆっくり、シッティングでは自転車を左右に振る、踏まないダンシングを混ぜて筋肉を休ませることです。

ペダリング入門シリーズの5本目、登り坂の回です。目的は足をつかずに登り切ること。速く登るためのトレーニングの話は一切しません。筋力も心肺もなるべく使わずに、200km・獲得標高2000mをだらだら走っても翌日筋肉痛にならない、そんな登り方が目標です。もちろん、そこまでいかなくても数百mアップ・数十kmのホームコースをのんびり楽しむ感覚で読んでください。倒れそうなときは無理せず足をついて休むのが大前提です。

登りも平坦も基本は同じ「踏まない」

基本は100kmを疲れずに走るペダリングとまったく同じです。

  • 後ろ足(引き足側)の脱力
  • 前足(踏み足側)の脱力
  • 足が自然に下りるサドル位置、特に前後位置

ペダルは踏み下ろさず、体の重さで自然に下りるがままにする。この「体重で走る」考え方は登りでも変わりません。ただし登りは状況がシビアなので、平坦以上に徹底する必要があります。

この記事で「踏まない」とは、前足でペダルを下向きに踏み下ろす力を使わないことを指します。一般的な使い方より少し広い意味なので、ご注意ください。

坂で自転車が傾くと、サドルは想像以上に後ろへ下がる

登りがつらい理由として誰もが思い浮かべるのは「坂なので後ろ向きの力がかかる」ことです。でもこれは乗り方では変えられないので、ここでは気にしません。実は、もっと大きな違いがあります。

自転車は坂で傾きます。10%勾配なら約5.7度、18%勾配なら約10.2度。すると、BB(クランクの軸)から見たサドルの位置が大きく動きます。BBからサドル上面まで660mm、シート角74度(ごく普通のロードバイク)で計算すると、次のとおりです。

勾配 傾き サドルが後ろへ動く量 下へ動く量
10% 約5.7度 約62mm 約21mm
18% 約10.2度 約110mm 約42mm

660mmは身長160cm台の私の数値なので、背の高い方はこれよりさらに大きく動きます。たった10%の坂でサドルが6cmも後ろに下がる。平坦で「サドルが後ろすぎると足が自然に下りない」と話しましたが、坂ではまさにその状態が勝手に起きているわけです。

さらに、ハンドルは近く、そして高くなります。サドルが後ろ、ハンドルが高く近い。これはほとんどママチャリのポジションです。ママチャリの人が坂で立ちこぎを始めるのも当然ですよね。

車やバイクなら、坂でもエンジンの性能そのものは変わりません。ところが自転車のエンジンは「体の重さ」なので、重心が後ろへずれるとエンジン出力そのものが落ちてしまいます。これが登りのきつさの正体です。

誰でもすぐできること:サドルを前に出す

対策は簡単です。

登りの前に、止まってサドルを一番前まで出す。 この先に峠や激坂が続くとわかっているなら、ぜひやってください。10%で6cm以上後ろに下がるのですから、思い切り前に出してちょうどいいくらいです。これだけでペダルに体重が乗りやすくなり、足が下りやすくなります。技術はいりません。誰でも、すぐに、登坂能力が上がります。

  • 登りの最中は、さらにサドルの先端に座る
  • 長い登りでは、サドルの傾きも少し前向きにすると骨盤を寝かせたときの圧迫がやわらぐ
  • 余裕があれば、普段はゼロオフセットのシートポストでサドルを後ろめにセットしておくと、登りの前に前へ出せる幅が大きくなる(必須ではありません。私も使っていません)

上半身を無理に前へ倒して何とかしようとしても、あまりうまくいきません。サドル位置と座る位置で前荷重を取り戻すのがポイントです。

サドルを前に出すとBBからの距離が短くなるので、理論上はその分だけサドルを上げてもいい計算になります。ただし上げすぎると平坦に戻ったときにつらくなるので、やるなら短くなった分だけにしてください(私自身は試していません)。

乗り方の3つのポイント

A:なるべくゆっくり

登りでは休めません。平坦なら疲れたときにふっと脚の力を抜けますが、登りで力を抜くと止まってしまいます。筋肉は10〜30秒休ませるだけでかなり回復するのに、それができないのです。だからとにかく頑張らない、なるべくゆっくり登ってください。激坂では下向きに踏む筋肉を多少使わざるを得ない場面もありますが、それでも最小限に。

B:シッティングでは自転車を左右に振る

前荷重にしても、登りでは足が下りにくいものです。そこで自転車を左右に振ります。右足が下りるときは右手を少し引く(または左手を押す)。すると自転車が左へ傾き、体は自転車に対して右前方へ乗り出す形になって、下りていく右足に体重が乗りやすくなります。

振るのは自転車だけで、体は左右に大きく飛び出さないようにします。シッティングでは積極的に振り、ダンシングでは振りません。

C:踏まないダンシングを混ぜる

これは本当に重要です。シッティングで脚が追いつかなくなっても、10〜20秒ダンシングを挟むと、その間にシッティングで使っていた筋肉が勝手に休みます。シッティングに戻ると、誰でもすぐ実感できるレベルで楽になります。

ただし、踏むダンシングではなく踏まないダンシングでなければいけません。前に体重が乗っていないダンシングでは、ひとこぎ、ふたこぎで脚が終わってしまいます。やり方は休むダンシング入門(50分)と、踏まないダンシング超入門(10分)の動画で詳しく解説しています。

おまけ:限界のときの裏技2つ

  • ダンシング中に一瞬止まる。 本当に激坂でつらいとき、0.05〜0.1秒でも動きを止めると、心拍がすっと下がってくれます。
  • 自転車の振り方を逆にする。 普通は左に傾くときハンドルを右へ切りますが、あえて逆に切ると、倒れる力が前に進む力に変わり、あと5〜10mだけ進めます。

ただし2つ目は蛇行になるので危険です。前後に車がいないときの最後の手段で、おすすめはしません。素直に足をついて、1分でも3分でも心拍が落ち着くまで待ってから登り直すほうがいいです。

まとめ

  • 登りも平坦も「踏まずに体重で走る」は同じ
  • 坂では車体が傾き、サドルが10%で約6cm、18%で約11cm後ろへ下がる
  • 登りの前にサドルを前へ、登りの最中はサドルの先端に座る
  • 乗り方は A:ゆっくり、B:自転車を振る、C:踏まないダンシングを混ぜる

余裕を持って頂上に着いて、翌日も平気でいられる。そんな登り方を目指してみてください。

よくある質問

坂道になると急に脚がきつくなるのはなぜですか?

坂で自転車が傾くと、BBに対してサドルが後ろ・下へ動き、ハンドルは近く高くなります。10%勾配でサドルは後ろへ約6cm、18%では約11cmも下がり、ママチャリのような後ろ重心になってしまいます。体重をペダルに乗せられなくなり、脚の筋力に頼ることになるのがきつさの大きな原因です。

登りの前にサドルの位置を変えたほうがいいのですか?

長い登りや激坂の前なら、止まってサドルを一番前まで出すのがおすすめです。技術がいらず、誰でもすぐに楽になります。登っている最中は、さらにサドルの先端に座るようにしてください。

ヒルクライムでダンシングを使うと疲れませんか?

体重で踏み足を下ろす「踏まないダンシング」なら、むしろ圧倒的に楽になります。シッティングの合間に10〜20秒ダンシングを混ぜると、シッティングで使う筋肉が休まり、戻ったときに脚が軽く感じられます。前に体重が乗っていない、脚で踏むダンシングは逆にすぐ脚を使い切るので注意してください。

動画で見る

この記事の元になった動画です。実際の動きは映像のほうがずっとわかりやすいので、ぜひあわせて見てください。

  1. 3:01 登りと平坦での同じ要素と違い
  2. 5:09 文言に関して前置き
  3. 7:03 自転車の特殊性
  4. 13:00 更なる違い
  5. 15:38 誰でもすぐ出来る事
  6. 21:14 3つの重要ポイント ABC
  7. 23:19 重要ポイントB:自転車の振り方
  8. 26:19 重要ポイントC:踏まないダンシング
  9. 30:07 2つの秘技:裏技
  10. 32:35 まとめ

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